• 6月 20, 2026
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日焼けの漢方

「 日焼けに効く漢方なんてあるんですか? 」 と言われそうですが、日焼けの後の炎症を抑え、治癒を促進するために、いくつか候補となる漢方薬があります。漢方の解説は記事の最後の方になります。

最近は少なくはなりましたが、小麦色の肌は健康的!という考えで、日焼けを推奨したり、人工的に日焼けをするサロンなどもあります。また逆に、美容には「日焼けは大敵」 という極度に日焼けを避ける考え方も広く広まっています。日焼けについて簡単に言ってしまえば、軽症の火傷 (やけど:医学用語では「熱傷(ねっしょう)」とも) でもあり、ひどい日焼けを放っておくと、後になって皮膚のトラブルに悩むこともあるので、どう考えるかは別にしても、そのケアには注意が必要です。

特に海水浴などでは、皮膚の広範囲に強い障害が及ぶことがあります。皮膚でおこる炎症、痛み、熱感、防御機能の低下、それらの治癒、精神的なストレスなどにより非常に多くのエネルギーを消費します。遊びすぎてグッタリ、と思っていたら、実は日焼け(火傷)によるダメージが大きくて、体が悲鳴を上げていることもよくあります。また、長期的な皮膚障害(たるみ、皮膚のクスミなど)も起きるため、日焼けをした場合は、しっかりとケアを行い、将来的なダメージを軽減することも大切です。

より科学的、学術的な解説をしますと(ここは読み飛ばしてしまっても問題ありません m(__)m)、日焼けは、その面積や深度が広がれば、広範な急性皮膚障害となります。ミクロ的な視点では、ヒスタミンやプロスタグランジンといった化学伝達物質(ケミカルメディエーター)や、IL-6やTNF-αといったサイトカインが大量に産生、放出されます。これらが炎症を惹起し、皮膚の水分の調節機能にも障害をきたし、皮膚が浮腫んだり、ほてったり、かゆみや痛みが出現します。影響は炎症の主座(主に炎症を起こしている場所)である皮膚だけではありません。暑さによる脱水と、疲労、疲弊による全身の調節機能の低下、発熱、治癒過程ではかゆみや角質の剥離なども起きるため、相当なエネルギーを消費してしまいます、重度の日焼けになれば、場合によっては極度の倦怠感、眠気、意識が遠のくなどの、強い感染症に匹敵するほどの負担になることもあります。このあたりの急性期、そして治癒のための慢性期の反応を少しでも和らげるため、一般的な保湿剤ステロイドの軟膏などとともに、漢方薬の内服をお勧めすることがあります。

日焼け対策

冒頭から漢方、漢方と言いながらも、基本的には日焼けをする前の「日焼け止め」 が最も効果的です。当たり前ですが、「日焼けをしない」 に越したことはありません。よく、日光に当たらないとビタミンDが…、とおっしゃる方もいらっしゃいます。確かに日光に当たることで体内でビタミンDが作られます。しかしながら、1日に必要なビタミンDを産生するために「日光にあたる時間」 は、夏で5〜10分程度、冬で30〜40分程度、しかも週に2、3回と言われています。週に数回、晴れた日にちょっと外出をすれば、日光に当たりすぎてしまうレベルです。また、漢方でなくとも、「飲む日焼け止め」というサプリ的なものはありますが、もちろんある程度効果はあるのですが、服用すれば日焼け止めを塗らなくてよいとは言えません。当然ながら物理的に紫外線をカットする 「一般的な 塗る日焼け止め」 の併用を前提とする方が良いと思います。

では、日焼けの原因についてすこし詳しくご説明いたします。日光には日焼けの原因となる紫外線が、大きく分けて二種類含まれています。ご存じの方もいるかもしれませんが、UVAとUVBという光の成分により、これがそれぞれ違った皮膚の障害を起こします。自分自身、どっちがどっちだっけ?となることもあるので、自分自身のためにも記述しておきます。

紫外線B波(UV-B)は、短時間で肌の炎症を起こし、ヒリヒリさせ、赤みが引いた後にメラニンによる肌の黒化が起きます。「気が付いたら焼けていた!」というような時もありますし、毎日の通勤や家事の合間などで、日光を短時間浴びるだけでも数日から1~2週間ほどで肌が黒くなってします。このような反応は、このUVBのダメージが積み重なって起こります。

もうひとつの紫外線A波(UV-A)は、長時間(数か月~年単位)かけてメラニン色素を大量に発生させるほか、肌の奥まで届き、コラーゲンやエラスチンにダメージを与え、皮膚を硬化させ、しわ、たるみを作り肌の若々しさが減退、トーンダウンの原因にもなると言われています。

日焼け止めにはその性能を示すパラメーターとしてSPF や、PAなどの表記がありますが、これらは紫外線B波(UV-B)を防ぐ「SPF」と、紫外線A波(UV-A)を防ぐ「PA」という指標になります。「SPF」はB波を防ぎ、主に赤みや炎症を起こすUVBを防ぎ、短期的なメラニンの沈着(いわゆる小麦色の日焼け)を防止する指標です。「PA」はA波を防ぎ、肌の老化を防止する指標と言えます。長時間、強い日光にさらされる場合は、性能の高いSPF+50、PA++++などをを使用し、可能なら2~3時間くらいで塗りなおしをお勧めしています。

日焼けをしてしまったら…

対策ができず不意に日焼けをしてしまった場合や、たとえ日焼け対策をしていても、夏の強い日差しでは、肌の弱い方はほんの20~30分程度でもある程度の日焼けをしてしまいます。そのような時にどのような対策、対応ができるのでしょうか。

まずは冷やす

やけどと同じで、基本的にはひどい場所を中心に徹底的に冷やします。これが基本です。ただ、凍傷になっては元も子もないので、ドライアイスを充てるなどはしないと思いますが、氷も直接ではなく、ビニールに氷と水を入れて軽く充てる、薄いタオルでもよいので一枚緩衝材を挟んで冷やすのが良いと思います。気をつけたいのは、冷却ジェルなどの冷却材、一部の市販の冷感剤やクリームなどは添加物なども含まれるため、防御力の弱った肌に直接塗ると、肌が荒れる原因になることがあります。

薬、軟膏、保湿など

一般的な日焼けの後の軟膏、クリーム、オイルなども先ほどの記述と同様に、日焼け後の肌はバリア機能がとても弱くなっており、肌の中まで直接侵入しやすい状態になっています。普段使っているから大丈夫と、いつもの化粧品や、保湿剤、軟膏なども、日焼けの強い肌に使うと思わぬトラブルの原因にもなります。特に肌の弱い方は、可能であれば医師から処方された軟膏や保湿剤(医療用のもの)がおすすめです。(市販薬と比べ添加物などがかなり少ないため)

薬品としては、まず一つはいわゆるワセリンやヘパリンの含まれる保湿剤があります。バリア機能を補助し、痛んだ皮膚を守ってくれます。そしてステロイドの軟膏です。強さのグレードがあるので、説明書や医師、薬剤師の注意をよく守ってください。部位によりステロイドの強さを変えることもよくあります。

少し前述もしましたが、最近は服用するサプリで日焼けの影響を軽減するものも出てきています。抗酸化作用や抗炎症作用をもつ成分が複数含まれているものもあり、効果も期待できます。ただ、天然由来成分なども含まれるものの、アレルギー体質の方はもちろん、そうでなくても体に合わない場合も見られます。服用には少し注意が必要です。

漢方による日焼け治療

そして、最後になりますが、日焼けの漢方についてです。

白虎加人参湯  いわゆる熱中症の薬として有名ですが、ほてり、のどや肌の乾燥に効果的です。熱中症の症状があれば特に服用をお勧めします。熱中症の症状がなくとも、皮膚のほてりなども効果が期待できるので、2~3日だけでも服用をお勧めるることがあります。

桂枝茯苓丸(加薏苡仁:ヨクイニン) ブログ内でも たびたび登場する方剤です。駆瘀血剤という血液の流れを改善し、治癒の促進、血液のうっ滞をとる力持っています。炎症が起きると、皮膚の毛細血管の流れが悪くなり、炎症がいつまでも消褪せず、長引いてしまいます。結果的には当然皮膚のダメージも進み、より色素珍訳の原因であるメラニンなどの産生が進み、炎症後色素沈着となってしまいます。少しでも治癒を早めるために、服用いただくとよいと思います。

黄連解毒湯  強めの瀉剤ではあり、下痢の副作用は懸念されますが、体と皮膚を冷やし、かゆみも軽減します。抗炎症効果が期待できるため、皮膚の発赤やほてりが強いときには短期間服用いただくことがあります。四物湯という血流改善の方剤と合わせて、「温清飲」 という処方にて経過を見ることもあります。

柴苓湯  五苓散という方剤と小柴胡湯という方剤を組み合わせた処方です。五苓散はむくみをとり、日焼けの場所の水はけを良くします。同時に小柴胡湯が抗炎症効果を発揮して、皮膚の炎症を和らげてくれます。

越婢加朮湯  五苓散以上に皮膚のむくみ、水疱を和らげる力があります。しかし、麻黄という生薬を含むため、胃腸障害がみられることがあります。胃腸の弱い方は特に短期間の仕様にとどめるとよいかもしれません。

清心蓮子飲  一般的に日焼けに使われることは少ない(もともと膀胱炎の処方として有名です)のですが、「日焼けそのもの」よりも、「暑さによる消耗」「睡眠不足」「ストレス」「胃腸機能の低下」を伴うタイプを想定しています。転じて胃腸に優しい抗炎症効果も期待できます。ほかにも水を捌く力、抗ストレス、滋陰(体を潤す)作用もあります。上記に紹介した方剤はどれも胃腸に一定の負担をかける薬が多くなっています。どうしても胃もたれなどが出てしまう時、ストレスが多い方には、ややトリッキーな使用方法ではありますが処方を検討しています。

他にもありますが特徴的な薬を紹介いたしました。ただ、正直なところ、単独の使用ではなかなか効果を発揮しません。状態、体質に合わせて上記の薬を組み合わせ、増減したり、経過により逐次変更しながら診てゆきます。

日焼けは夏の風物詩のように扱われますが、実際には大切な体にとって、立派な外傷です。皮膚だけの問題ではなく、脱水や疲労、睡眠の質の低下など、全身に影響し、生活のQOLも低下することがあります。しっかり予防し、それでも日焼けをしてしまった場合には、早めのケアを心がけましょう。当院では西洋医学的な治療に加えて、漢方を用いた体質や症状に合わせた治療もご提案しています。お困りの際はお気軽にご相談ください。

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