- 5月 31, 2025
漢方、少し効いた（全く効かない）けど、、、その後は？
漢方が効いたとき（効かなかったとき）の次の一手についてのお話になります。
漢方を服用して、「いくらか効いたかな」という事がありますが、その後どうしたらよいのでしょうか？
効果がなければもちろん中止、変更しますが、それはどのくらいのタイミングなのでしょうか？
漢方には様々な生薬が含まれ、大外れの漢方でなければ、服用で体調が「少し良くなる」ことはよくあります。しかし、その後で、
飲み続けたほうが良いのか、中止してもよいのか、もしくは別の漢方に変更が良いのでしょうか？
このあたりは、実のところ結構悩ましいところです。正直に申し上げれば、実際に患者さんに処方するときも、継続するか変更するか悩むことはよくあります。
廃薬という考え方
一般的な回答ですと、基本的には、「一定期間」服用して症状が良くなれば、「一度減量や中止をしてみましょう」とお話することが多くあります。というのも、漢方といえど、薬は飲まないに越したことはありません。中止したうえで症状が再発するのか、もしくは変化するのか、全く変わらない（良くなった状態を維持できる）のかで、次の一手を考えます。もちろん症状の変化の度合いや、服用する薬の種類、本人のご希望にもよります。効果があった薬でも、しばらく服用したうえで中止してみることを漢方では「廃薬」と言います。
逆に、漢方を服用しても効果がなかったときは、やはり中止をするのですが、その判断までにどの程度の期間が必要でしょうか。これは薬によりかなり違いがあります。一つ一つの薬の特性があり、効果が出るまでにかなり差があるのです。ものの数分で効果が出る薬もあれば、翌年になって本領を発揮する薬もあります。ここは一概には言えません。ただ、構成生薬が少ない漢方薬ほど素早く効果が出る傾向があります。あくまで傾向です。また構成生薬が多いものや、体力や体重、食欲や栄養の充実度などの足りないものを補う薬は、効果発現に時間がかかるといわれています。
効かないんですけど、、、！？
また、効果が感じられない場合には内服を止めるのですが、その後に少し注意が必要です。というのも、実は結構効いていたという事があります。「効果がない」と思い薬の内服をやめた後に、期せずして体調が悪くなる時は、ご本人は気付かずに「割と効いていた」という場合が考えられます。やめた後も自分の症状をよく観察し、悪くならないか（もしくは薬が悪影響を及ぼしていて、逆に良くなることもありますので）少し注意しながら経過を見てください。
効かなかったときの次の一手についても、やはり服用してどのような変化があったかが重要になります。「効かなかった」という事だけでなく、どのような変化があったかを具体的に教えていただくと、次の一手の選択に大変役立ちますので、漢方を中断される際は、何が良くて、何が変わらず、悪くなったところがないかを是非チェックしてみてください。
瀉剤と補剤
また、漢方の中で、特に「瀉剤」と言われる薬は注意が必要です。漢方の中には、「足りていないものを補う薬」を「補剤（ほざい）」と呼び、 反対に、「不調を生じる原因を取りのぞく薬」を「瀉剤（しゃざい）」といいます。余分なエネルギーを取り除く瀉剤は、飲み続けることで、必要なものまで除いてしまうこともあります。基本的に短期間の使用を前提にしている薬もあります。服用を続けて体調維持に必要なものまで失ってしまっては病状が悪化してしまいますので、瀉剤の系統の薬を服用してある程度改善した場合は、いったん中止して様子を見ることをお勧めします。特に発汗を促したり、強力に瀉下（下剤）を促す薬、強力に体を冷やす薬などは長期服用による副作用がないか、注意が必要です。また、含まれる生薬や組み合わせで副作用が出るものもあるので、ご注意ください。
別テーマの漢方解説 → 漢方の副作用について
有名な芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
また別のケースとして、飲み続けることで作用が減弱したり副作用が出やすくなるものもあります。こむら返りの薬として有名な芍薬甘草湯などは、服用を続けると効果が今一つになったり、甘草という生薬の副作用として低カリウム血症や高血圧などが出現することがあります。このときは芍薬と甘草を含む別の漢方薬に変えて、継続服用とすることがあります。
このように、症状が、どの程度良くなり（良くならず）、どの時点で中止（変更）するかは、それぞれの薬の性質とご本人の体調が指標になるため、一概には言えません。この辺りは、漢方医の腕の見せ所の一つと言ってもよいと思います。ただ、全身の蕁麻疹や、明らかに服用してすぐに不調が出る場合はいったん中止して、お早めにご相談ください。
何か気になる症状、漢方薬などがありましたら、お気軽にご相談ください。