• 11月 2, 2024
  • 11月 15, 2024

胃腸の漢方 その1 ~腹痛~

症状を訴えやすく、調子を崩すことも多い消化器症状ですが、この胃腸の症状に使用される漢方について、数回に分けて解説してゆきたいと思います。「食べる」ということは生命維持の基本行動でもあります。消化機能が衰えると、栄養不足というだけでなく、全く関係ないような様々な不調の原因にもなります。一見、簡単なようで、意外に難しいのが消化器症状です。

胃腸障害の最もたる症状は「腹痛」ですが、これは、だれしも一度は経験があると思います。今回は「胃腸の漢方 その1」として腹痛について書いてゆきます。腹痛は、言葉としては単に「腹部の痛み」ですが、その原因は多岐にわたり、診断を行う際も、痛みの場所、時間経過、持続時間、程度、排便との関連などを考慮しなくてはならず、腹痛のタイプもさまざまです。下痢や嘔吐を伴う場合は感染性腸炎、炎症性腸炎などの可能性もあります。

腹痛の原因として考えられるのは、感染症はもとより、食べ過ぎ飲みすぎ、食中毒、疲れ、冷え、年齢、消化能力の低下などの機能性の疾患、器質的疾患(手術後の癒着、捻転、通過障害、悪性腫瘍など)、炎症性疾患(虫垂炎、憩室炎、潰瘍性大腸炎など)などキリがありません。精神症状とも強く関連しており、ストレスで胃潰瘍、緊張で腹痛と下痢症状などの経験のある方も多いと思います。不調の場所も、のどから始まり、食道、胃、十二指腸、小腸、結腸、直腸が基本ですが、胆のう、肝臓疾患などがかかわることもあり、意外に簡単ではありません。

西洋医学でも、東洋医学でも、いろいろな症状をお伺いしながら、病状に合う処方を考えてゆきます。

昔から使われる漢方でも、腹部症状だけでなく、体力や体全体を診ながらが処方を考えます。江戸時代以前の昔の人々も、風邪や感冒症状と同じように、腹部症状はこじらせれば命にかかわる病気であったため、いろいろな薬を試し、処方を吟味してきました。江戸末期でさえ虫垂炎となれば、抗生剤もなく、手術もできないため、若い方でも命を落とすことが多かったようです。

以下に腹痛に用いられる漢方を紹介してゆきます。ドンピシャで当たらずとも、特に強い症状や、体力、消化能力の状態も合わせて選考してゆきます。

「安中散」  いわゆる胃痛(上腹部のキリキリ)、冷え、虚弱体質の方に。ゲップ、吐き気などにも

「平胃散」  胃もたれ、消化不良、食べ過ぎ。

「胃苓湯」  食べ過ぎ、えずき、下痢、吐き気、食あたり、急性腸炎、

「五苓散」  小児の嘔吐、下痢、夏バテ

「桂枝加芍薬湯」 過敏性腸症候群、腹痛、しぶり腹、便秘の腹痛(硬い便の通過障害)

「芍薬甘草湯」 腸管の痙攣、急な腹痛、尿管結石にも

「当帰芍薬散」 月経困難症、冷え、むくみ 

「桃核承気湯」 強い便秘、月経困難症、イライラ

「大建中湯」 腹部の冷え、体力低下、腸管蠕動運動の低下、便秘

「小建中湯」 小児の消化機能低下、胃腸虚弱、(大建中湯と合わせて中建中湯とすることも)

「黄耆建中湯」 小建中湯の症状に加え、肌荒れ、皮膚炎、発汗、アトピーなどがある方に

「黄連解毒湯」 体力のある方、胸やけ、二日酔い、みぞおちのつかえ、膨満感

「半夏瀉心湯」 下痢と嘔吐のある方、腸のゴロゴロ音が強い腹痛、腸の強い違和感

「腸癰湯」(チョウヨウトウ〔癰:病ダレに雝〕) かつて(手術などができない時代に)虫垂炎に使われた漢方です。現代では熱症の方の瘀血に使用されることがあります。

「大黄牡丹皮湯」 こちらも虫垂炎に使用された薬、便秘と月経困難症に使われることも。

「将軍湯」 下剤であり大黄という一つの生薬(甘草を足すことも)で構成される

※ 以上、腹痛の漢方について書いてきましたが、あまりに強い腹痛の際は、「急性腹症」 と言って、西洋医学的な診断、検査を優先した方が良いことも多いので、急に出現した腹痛、立っていられないような腹痛の際は、いろいろな検査のできる病院に受診し、早急な診察、検査をお勧めいたします。

食べることは生命活動の基本です!食べられなければ、治る病気さえ回復がままなりません。

胃腸の働きを整えて、ぜひ、快適な食生活を送ってください。(ただし食べすぎにはご注意を。)

以上、腹痛に関する漢方の紹介でした。気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。

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