• 12月 11, 2025

漢方の効果判定 ~やっぱり時間かかるでしょ!?~

漢方の効果判定についての解説になります。漢方の効果が出るには、 「かなり時間がかかる」 という印象をお持ちの方が多いようです。しかし、ものによっては数分で効果を実感できるものもあります。効果判定までどの程度の時間がかかるのか? 今回はそのあたりを少し解説させて頂ければと思います。

別の記事で、漢方を服用して次の一手は?という内容の解説をしましたが、その中で、効果を判定する時期について少し触れました。

漢方を服用して、効果が出たか、変わらないのか、むしろ悪化したのか?この判定は、実は結構難しく、注意深い観察と、深い考察が必要です。というのも、苦しい症状が良くなった場合、意外に症状が良くなったことに気が付かないことも多いのです。「治ったことをあまり意識しないことが多い」 といった方がいいかもしれません。

よく、 「のど元過ぎれば…」 と言いますが、本当に苦しくて日々苦しんでいる症状、長年続いている症状であればまだしも、それほどつらくない症状、例えば風邪の鼻水や、軽めの肩こり、食欲不振などは、改善しても、それを 「治ったと感じにくいこと」 がよくあります。風邪をひいたときに、多くの感冒症状は自然に回復することが多いのですが、それぞれの症状が 「いつ治ったか」 について、「意識している方」 は意外に少ないのです。「 言われてみれば、既によくなっていて、思い返せば3日くらい前から改善してきた」 となることがほとんどです。

風邪などの場合、たとえば 「熱が出た日」 はよく覚えているのですが、治るときは徐々に良くなることも多く、治ったこと自体それほど気にしないことも多いのです。

これは漢方あるあるの一つで、副作用が出た時はすぐにわかることが多いのですが、漢方がよく効いた場合は、あまり意識(記憶)されないことも多くあります。

漢方の多機能性

漢方は複数の効果を持っており、もちろん主訴である主症状に対して薬を出すのですが、その他の体質的な部分も考慮して、 「複数の効果」 を期待して処方することもあります。肩こりに対して薬を出したら、肩こりはいまいちだが便秘と顔のほてりが改善したなどの話はよくあります。逆に、患者さんによっては期待した症状の改善が全くない場合もありますので、その際には原因をよく考え、別の漢方や、西洋薬に切り替える場合もあります。

それぞれの症状に 「改善のしやすさ」 みたいなものがあり、その日のうちに良くなったり、1か月後に良くなる症状なども混在するため、いろいろと考えをめぐらしながら診察をしてゆきます。ご本人の病気への考え方や、複数の症状、その改善までの時間、どの程度薬を飲めたか? などを考慮するため、服用してからの経過について、根掘り葉掘り、いろいろとご質問することも多くなります。

実際にどのくらいかかるの?

では実際に、漢方の効果発現にまで、

一体どれくらいの時間がかかるのでしょうか。

例えば有名な 「芍薬甘草湯」 という 「こむら返りの薬」 は数分(約6分で)効果が出るといわれています。

当ブログでもよく紹介する 「五苓散」 という処方は効果発現に約2時間と言われますが、個人的にはめまいや吐き気などは30分ぐらいで効果が出始める印象があります。小青竜湯というアレルギー鼻炎に使用される薬も鼻水症状に服薬して10分から30分くらいとおっしゃる先生もいらっしゃり、自分も30分くらいで効果を感じます。いろいろな症状と体質、その程度や薬の飲み方、服用時間も関係するので一概には言えませんが、早いものではその日のうちに効果が実感できることも結構あります。下剤については数時間~2日後には効果が出ることが多い印象です。一般的にはその漢方薬の構成生薬が少ないもの(2~5種類くらい)や、瀉剤(余っている物、エネルギーを外に出す薬)については比較的早めに効果が出やすいと思っています。

スッと早く治れば、 「治った!」 という印象も強く、よくわかるのですが、効果発現に時間がかかるときはどうでしょうか。言われてみれば治っていたという事もよくあります。

逆に、「補剤」 と呼ばれる、足りない栄養、体力などを補う薬は、総じて数日から数週間、下手をすると数か月かかるものです。単に食欲が出るという意味では、翌日でから効果が出るものもありますが、実際に食べられるようになり、消化したものが体の隅々に運ばれるようになり、そこで筋肉や肌や爪、髪などに変化するまでには、やはり数日では足らず、数か月かかるかもしれません。ご高齢の方でしたらなおさらです。

体を温める漢方などで、即効性があるものもありますが、やや強めの薬になってしまうこともあります。強めの薬では、「体力が少ない方」はどうしても胃もたれ、動悸などが出てしまうことがあり、いい意味でも悪い意味でも「優しい」薬にしなくてはならず、効果が出るのに時間がかかります。数か月では足らず、翌年まで継続して飲んでいたら、「次の冬」からやっと症状が楽になったとおっしゃる方もいらっしゃいます。

早く治ったほうがいいけれど

患者さんとしては、疾患は早く治ったほうが良いと思いますが、体にとってはあまりに変化が大きすぎるとかえって負担になってしまうこともあります。西洋医学の話になりますが、例えば高血圧の治療をするときに、収縮期血圧が180mmHg 血圧があるからと言って大量に降圧薬を使用することはありません。慌ててすぐに正常の120mmHg まで血圧を下げれば、血液の循環の変化でめまいがしたり、倦怠感や、循環不全を起こす事さえあります。あまりに高い場合、突然高くなった場合などは別ですが、ある程度時間をかけて下げてゆくのが基本です。

漢方でも、ある症状が、本人の知らないうちに、それほど意識もせずに、気が付いたら治っていたという事がよくあります。お困りの症状が完全にゼロにならなくても、それほど気にならない程度になって、次の受診の際に症状を聞かれて、初めて改善したことに気が付くという事もあります。

個人的にはこれが一番良い自然な薬の効き方ではないかと思っています。

食欲のない方が、食欲が出て急に大量の食事をすれば、消化器官の消化機能が追い付かず、もたれ、胸やけ、下痢、腹痛などを超しかねません。

また、漢方では 「瞑眩」 と言って、不調に対して非常に薬がよく効いた場合に、一時的に発熱や下痢、嘔吐、何らかの出血(不整出血、鼻出血)などが起きる事があります。その後しばらく服用を続けていると徐々に治まり元の症状も消えているという経過になります。これは 「好転反応」 などとも呼ばれますが、本当に好転反応なのか、単なる副作用なのか、実はかなり判別が難しいのです。その時は、よほどの確信がないかぎり、一度中止して、経過を見ることも少なくありません。この 「瞑眩」 と言われる反応は、はよく効いていることにはなるのですが、体がその変化についていっていないという考え方もできます。漢方を選ぶ側としては、できるだけよく効く薬を選んで処方していますが、あまりにぴったり嵌ってしまうと、逆に苦しい思いをしてしまうことがあるというのは人体の不思議なところです。

このように漢方の効果判定には一概にお答えできない複雑な面があります。もちろん、すぐに効いた! と感じられる場合は良いのですが、期待する効果がいまいちだった場合などは、その他の症状も併せて、何か変化がないか(いつ頃から良くなった、悪くなったという時間経過を含めて)教えて頂けると、大変助かります。症状によってはもちろん改善に時間がかかるものや、個人差、年齢差もありますので、そのあたりも受診の際にご相談をいただければと思います。

何か気になる症状、漢方がありましたらお気軽にご相談ください。

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