- 1月 7, 2025
- 1月 10, 2025
インフルエンザ A型、B型について
患者さんから質問があったインフルエンザのA型とB型の違いについて、簡単ですが解説してみます。
ご存じの方も多いと思いますが、インフルエンザにA型、B型という分類があります。よくニュースなどで聞くワードではありますが、一体何が違うの?というご質問がありましたので自分の勉強も含め、少しまとめたいと思います。
オルソミクソウイルス科
一応、インフルエンザA型、B型についての解説ですが、余談になってしまい、話題になることは少ないのですが、実は「C型」のインフルエンザも存在します。存在はするものの、病原性という意味ではほとんど問題にならず、覚える必要もありません。これらのインフルエンザウイルスは、ウイルス学上で「オルソミクソウイルス科」という分類に属しています。
また、より大きな分類では RNAウイルス の一つという事になります。エイズウイルスや、一時期話題になった、かの危険なエボラウイルス、また、いわゆるコロナウイルスもこのRNA ウイルスに分類されますが、その特徴はだいぶ異なります。
専門的な書き方なってしまいますが、オルソミクソウイルス科の中にいくつかのウイルスが分類されており、① Influenzavirus A(A型インフルエンザウイルス)②Influenzavirus B(B型インフルエンザウイルス)③ Influenzavirus C(C型インフルエンザウイルス)④ Thogotovirus(トゴトウイルス)⑤ Isavirus(アイサウイルス)の5つの属に分類されます。
インフルエンザ A型とB型の構造上の違いは、下図のごとくウイルス核タンパク質(nucleoprotein [NP])およびマトリックスタンパク質(matrix protein [M])の抗原性の違いとされておりますが、より詳しい構造の違いは、さらに特殊で専門的な解説になってしまうため省きます。とくにA型の場合はウイルス表面に「ヘマグルチニン」(HA)と「ノイラミニダーゼ」(NA)という構造があり、この二つがいろいろと変化し、H3N2などと表現され細かく分類されることがあります。この構造の変化により、A型のインフルエンザは、新たな流行株が頻繁に生まれます。一方、B型は変異が少ないため、A型のような細かい分け方はされません。
我々 「ヒト」にとってのA型とB型の違い
ちょっとマニアックな話題になってしまいましたが、ここからは、さらに、A型とB型について、われわれ人間にとって、より重要な違いを挙げてゆきます。
まずA型はヒト以外にも、家禽(ニワトリ、アヒル、ウズラなど鳥類の家畜)、ウマ、ブタなど様々な動物に感染します 。(B型は基本的にヒトのみです。)
A型は数年~十数年に一度、世界的な流行を起こしていて、大きな流行は1918年にスペインかぜ(H1N1)、1957年にはアジアか ぜ(H2N2)が発生、1968年には香港型(H3N2)が現れ、ついで1977年にソ連型(H1N1)が加わり、現在(R6年~7年)の日本はA型のA(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型とB型(ビクトリア系統)が流行しているとされています。
流行の時期にも違いがみられ、A型は年末から2月くらいの間にピークが来ることが多く、B型は後を追うような形で遅れて、1月~4月くらいまで流行することがあります。
A型とB型で、現れる症状は大きくは変わらず、重症化のリスクも同程度といわれています。しかし、上記のようにA型は変異を起こしやすいため、毎年のように何度も感染し悪化するイメージがあり、頻繁に変異があるので、感染のパターンや病状が、同じA型でも微妙に異なることがあります。またB型インフルエンザは薬が効きにくいことがあると指摘されています。
鳥インフルエンザと新型インフルエンザ
A型、B型と別に「鳥インフルエンザ」と「新型インフルエンザ」と呼ばれるものがあります。 この両者は基本的にはA型のインフルエンザになります。「鳥インフルエンザ」は、通常トリからトリにしか感染しませんが、まれにヒトへも感染します。「新型インフルエンザ」は、鳥インフルエンザウイルスが、ヒトからヒトへの感染力を持った型のウイルスに変化して発生するインフルエンザになります。 これは多くの方が免疫を持たず、感染力が強い新たなインフルエンザウイルスとなります。
インフルエンザの治療と予防
インフルエンザに対する抗ウイルス薬はいくつかあり、A型、B型療法に効果があるタミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザが代表的です。特にゾフルーザは一回の服用で効果があり、継続して服用する必要がない点では画期的ではあります。これらの薬は基本的にはウイルスの増殖を抑える薬になるため、できるだけ発症から短い時間での服用が効果的になります。検査で陽性の所見が出たら、処方箋をもらったらすぐに薬局に行き、きるだけ早目の服用が望まれます。また漢方薬にもこれらの薬と同等の効果が認められたものもあり、併用することがあります。
感染予防はもちろんマスクや手洗いですが、部屋の加湿やバランスの良い食事など、体調を整えて抵抗力、体力を温存しておくことも大切です。予防接種ワクチンには「感染を防ぐ効果」と「重症化を防ぐ効果」の2つの役割があります。毎年の感染予防効果は30~70%と幅があり、完全に感染を防ぐことは難しい場合もあります。 しかし、重症化予防は効果的であり、高齢者や基礎疾患を持つ人がインフルエンザによる重篤な症状を避けるために重要です。
インフルエンザの検査
ご存じの方も多いと思いますが、現在流通している検査キットは、鼻腔の奥に綿棒を入れて、検体を採取するキットが多くなっています。またコロナを同時に測定できるものや、A、B判別ができるものが多くなっております。ただその検査を受ける時期に注意が必要です。インフルエンザについては、発症後(発熱後)12時間過ぎれば(インフルエンザウイルス量が十分に増殖している状態では)7~9割の陽性率が期待できます。12時間以内は(検査のタイミングが早すぎてウイルス量が十分に増殖されていない状態で)陽性率がかなり下がります。12時間以内でも運よく陽性であれば治療は簡単なのですが、そうでない場合は翌日に再度検査が必要となります。24時間経過しても陰性の場合は、新型コロナやそのほかの感染症の可能性が高くなります。
鼻(鼻腔)の奥まで綿棒を入れるつらい検査にもなるので、特にお子さんの場合は、いつ検査を受けるか、特に熟慮が必要です。一度検査をしてしまうと、あまりのつらさに翌日検査を受けてもらえない可能性が出てきます。激しく嫌がる場合は、鼻腔損傷などのリスクもあり検査を断念する場合もあります。発症12時間以内の場合は、まず症状に合う薬だけ処方してもらい、翌日に再受診して検査を受けて陽性であれば追加で抗ウイルス薬を処方してもらうのも選択肢の一つです。ただ、抗ウイルス薬自体は早く服用する方が効果も出るため、それを踏まえていつ検査をするか?、ここが非常に悩ましいところです。
別の記事でも書きましたが、令和6年ー7年の冬はインフルA型、B型だけでなく新型コロナやマイコプラズマも流行している現状です。感染症には特に注意して、日々をお過ごしください。何か気になる症状や、ひどく長引く咳などがございましたら、お気軽にご相談ください。