- 12月 21, 2024
糖尿病について
糖尿病について、簡単ですが解説してゆきたいと思います。その病態や、よく使われる指標、この10年くらいの治療の変遷と、令和6年時点での最新の治療薬などにも少し触れたいと思います。
糖尿病の病態
糖尿病とは文字通り「尿に糖が出てしまう」病気ですが、それは結果であって、病気の本質ではありません。糖尿病は言い換えれば体が摂取した糖分や、栄養(カロリー)を正常に処理できない状態です。インスリンというホルモンが強くかかわっており、その分泌量と体の反応が低下して、血液の中の糖分が高くなってしまいます。その結果余った糖が尿中に漏れ出てしまうわけです。
わかりやすい説明としては、やや語弊があるかもしれませんが、体の中にインスリンという「器」があって、その器から糖分があふれて、こぼれてしまい、「余ってこぼれた糖分」が体に悪影響を与えている状態とも言えます。その器の大きさが、病的な原因で、小さくなったり、ひびが入ったり、穴が開いて漏れてしまうような状態が糖尿病です。
インスリンというのは、ほんの少しの量で、体に多大な影響を与えるホルモン(焼肉のホルモンとは別物です)と言われる物質の一つですです。体内のホルモンはいろいろな種類がありますが、インスリンは、膵臓で作られ、血糖値を下げる働きをもつホルモンになります。このインスリンホルモンの分泌量が足りなくなったり、インスリンに対する体の反応が鈍くなってしまう状態が糖尿病であり、糖分を受け止める器としての機能が低下してしまいます。
膵臓の疾患などでインスリンが全く分泌なってしまう病態を「Ⅰ型糖尿病」、インスリンの分泌が相対的に少ない状態、もしくは出ているけど体の反応が鈍い状態を「Ⅱ型糖尿病」と定義されています。
糖尿病の怖いところは軽症の場合は症状が出にくく、血液検査などをしないと判定できません。よくある症状が多飲多尿と言われ、異常なほど喉が渇き、大量の水分を摂取して、尿の量や回数が多くなる状態がありますが、これは血糖値が相当高くなっている状態です。早めに発見するためには、定期的な健康診断などで、血液検査をお受けいただき、血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)と呼ばれる検査値をチェックする必要があります。
大雑把な言い方になってしまいますが、HbA1c 6.0~6.5% くらいまでの状態を境界型糖尿病(糖尿病予備軍)として、グレイゾーンが設定されています。この状態では生活習慣(食事、運動)の改善などの指導の対象になりますが、6.5%以上になると、糖尿病を疑い、内服薬などの治療を検討することになります。
血糖値は血液中の糖(グルコース)の濃度で、その直前に接種した食事や飲み物の影響を受けます。もう一つの指標であるHbA1c はおよそ1ヶ月~2か月ほどの血糖値を反映する数値で、%であらわされます。例えば1週間頑張って食事療法や運動を行った場合、血糖値は改善しても、それ以前の数値が悪ければ、HbA1cの数値ははあまり変化しません。
そして、血糖値が高くなる状態が続くと、動脈硬化や神経障害などが徐々に出現し、体中の臓器に影響してゆきます。具体的には腎機能障害や、視力障害、手や足の先の知覚異常などです。また動脈硬化も進行し、心筋梗塞や脳梗塞、下肢の血流不全による壊死などのリスクが高くなります。
失明に近い視力障害や、人工透析が必要になる腎機能障害、心筋梗塞、脳梗塞などは、その人の人生にも大きすぎるダメージになるため、糖尿病を悪化させないようしっかりと管理することが大切です。
糖尿病による主な合併症
- 糖尿病性腎症
- 糖尿病性網膜症
- 末しょう神経障害
- 糖尿病性壊疽
- 皮膚感染症
- 免疫力の低下など
糖尿病の治療
糖尿病の治療は、生活習慣の調節のほかに、内服薬と注射による治療があります。
この10年ほどで糖尿病の治療は様変わりしました。以前使用されていた経口血糖降下薬はもちろん血糖値を低下させますが、空腹時などに低血糖のリスクが高く、副作用も比較的強いものでした。専門的な話になってしまいますが、この数年で傾向血糖降下薬としては同じ範疇に入りますが、新しい種類の薬として、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬といった薬剤が出現し、その他にもGLP-1受容体作動薬、GIP/GLP1受容体作動薬なども使われるようになりました。中には体重減少が期待される薬もあります。イメグリミンと呼ばれるミトコンドリアに作用する薬も出現しています。
これらの薬は低血糖のリスクが少なく、しかし効果はしっかりとみられるため、以前の薬よりも多く使用されるようになっています。もちろん以前から使用されている薬も併用されることがあり、病状によって調節して処方されています。
薬の種類も増えて、1週間に一回でよい内服薬、注射薬なども出てきており、患者さんのライフスタイルによっては選択されることもあります。ただ、文字通り週一回の薬となるため、逆に飲み忘れや注射の打ち忘れなども懸念されるため、良い面と注意しなくてはならない面があります。
また、これらの新しい薬の中で、SGLT2阻害薬と言われるグループの薬の中には、心臓や、腎臓への効果が認められているものもあります。その効果が糖尿病の分野だけにとどまらず、その他の臓器にも良い効果がみられて今後の新たなエビデンスが非常に期待されています。糖尿病の治療薬としてだけでなく、心不全や、腎機能の低下がみられる場合は、積極的に選択されている薬剤になります。
糖尿病は症状が出にくい疾患のため、仮に健診で指摘されても、ついつい医療機関への受診や精密検査を先延ばしにしがちです。早めの治療が悪化を防ぎ、合併症を予防することにつながります。将来後悔しないためにも、まずは医師への相談と、定期的な検査をお勧めいたします。
以上、簡単ですが、糖尿病の概略について解説してみました。何か気になる症状や、過去の健診結果などありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。