• 11月 26, 2024

漢方の副作用

いろいろな意味で物議を呼びそうなタイトルですが、漢方薬にも当然のごとく副作用があります。いわゆる西洋薬に比較して少ないといわれておりますが、無い訳ではありません。今回はそのあたりについて、全般的な解説をさせて頂きたいと思います。

先に結論を申し上げると、漢方の副作用の悪化を防ぐために気を付けることがいくつかあり、主に出現する症状としては、咳、動悸、息切れ、浮腫、腹痛、消化器症状(下痢)などがあります。また西洋薬でも同様ですが、定期的な採血検査が重要です。

漢方の副作用として、有名なものの一つに「間質性肺炎」という病態があります。特殊な肺炎が起きて、咳や息切れといった症状が出ます。肺炎と言っても一般的な抗生剤などで改善はしません。漢方薬に含まれるオウゴン(黄芩:芩は草カンムリに今)という「生薬」が原因ではないかと言われています。この生薬を含む漢方(例:小柴胡湯など)を服用を開始後、しばらくして咳が続くようになり、その後も服用を続けると、レントゲンやCTで 肺炎像がみられることがあります(服用を続けて数年後に出ることもあります)。画像や採血による精密検査で、風邪などの感染症で起こる肺炎とは本質的に異なることがわかります。そのまま漢方の服用を続けたり、何もせず放置すると、悪化して命にかかわる場合があります。

しかし、ほかの薬剤(西洋薬)でも同様に間質性肺炎を起こす薬剤があり、「膠原病」などの疾患の「合併症」として間質性肺炎を起こすこともあり、本当に漢方が原因なのか、しっかりと鑑別は必要です。漢方薬で起こる場合については、アレルギー反応が疑われており、初期の段階であれば中止すれば改善することも多いといわれています。「漢方薬を服用している」というだけで、漢方薬が原因とされてしまうこともありますが、前述のようにほかの原因で発症することもあり、治療も異なることがありますので、診断には注意が必要です。また変な話ですが、ほかの原因で起こった間質性肺炎の治療に、この間質性肺炎の副作用の恐れのある漢方が使用されることもあり(オウゴンとサイコを含む漢方薬など)、これが意外に効果を上げている報告もされています。

場合により毒にも薬にもなる漢方薬ですが、やはり患者さんの症状をお聞きしながら効果が薄ければ、また、何か有害な症状があれば、速やかに中止、変更してゆくことが大切です。

当院では漢方薬の処方の後に、予想外の発熱、息切れ・呼吸困難、乾性咳嗽などがあった場合は、即座に中止していただくようお話し致します。ただ当院で漢方薬を処方する場合は、上記の症状に限らず、多くの患者さんに、「服用して何か調子が悪いことがあれば、無理せず一度中止してご相談ください」と申し上げています。

その他の症状についてですが、例えば漢方薬により下痢をする症状はよく見られます。むしろ病状によっては下痢をするまで服用してくださいとご説明する場合もあります。漢方を服用される患者さんの中で、実証の患者さん(もともとお元気な方)は、便秘傾向の事も多く、実証の方に処方する漢方は、効果を上げるため、多くの方剤にある程度の下剤が含まれれおります。これをそのまま虚証の方(元気のない方、体力が低下している方)に処方すると、当然ながら便が緩くなり、下痢をしてしまうことがあります。便の調子を見ながら、ご自身で服用量を調節をしていただくこともあります。

他にはサンシシ(山査子)という生薬を長期に(5年以上)服用することで「腸管静脈硬化症」という副作用が指摘されています。無症状の事もありますが、腹痛が出たり、下痢を起こすことがあります。腸管静脈硬化症は腸の静脈に石灰化が起こりますが、これはCTなどで診断ができます。症状や異常所見が著しい場合に、治療として大胆に「腸管切除」という手術療法を行う場合がありますが、薬を中止して自然軽快する報告も多数あり、手術はむやみに決断せず、できる限り慎重に適応を検討することが必要です。

そのほか、肝障害などが出ること、またカリウムという血液中の成分が減ってしまうことも見られますが(偽性アルドステロン症)、採血検査で判明した際に、早期に漢方薬を中止することで改善することがほとんどです。

また、漢方に限った副作用ではありませんが、センナや大黄(だいおう)、アロエなどの大腸を刺激する下剤を、長期にわたって飲み続けた結果、大腸メラノーシスという腸管の色素沈着が起こることがあります。また、これらは市販薬として簡単に購入できる成分のため、「安易に長期に大量に」服用を続けてしまい、最後には腸管神経叢がダメージをうけて、腸の動きが悪くなったり薬自体が効かなくなってしまうことがあります。漢方の下剤にはこのようなことをを少しでも防ぐために、腸壁を守る成分もある程度ですが一緒に配合されいます。

ざっとですが、漢方について大まかな副作用についてご紹介をさせて頂きました。服用いただいている患者さんには、このような副作用を早い段階で確認するため、定期的に採血検査をご提案させて頂いたり、なにか変わった症状がないか、受診時にお尋ねすることもございます。もし変だな? とお思いになる症状がありましたら、どうか遠慮せず医師にお伝えください。もちろん、その症状は副作用ではなさそう、という場合もあり、服用継続をご提案することもあります。人の体ですから、100% 言い切れるという事もないので、リスクと効果を相談して、可能であれば変更したり、中止して経過を見ることもあります。

漢方の副作用について、思いつくままに語ってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。表現上、一部、断定的な物言いもありますが、漢方に関してはまだ証明されていない部分も多くありますので、現段階での知見というところでご容赦いただければ幸いです。今後のさらなる研究とデータの蓄積で、より詳細な統計が出てくると思います。

人の体は千差万別で、症状も刻々と変わります。時間が限られる外来診療ですが、できるだけ患者さんの状態や、体質を見極める診療を心がけています。

何か気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

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