- 11月 22, 2024
コロナ後遺症について ~なめたらいかん!~
ちょっとあおり気味のタイトルで申し訳ありません。
このところインフルエンザや、マイコプラズマの流行の兆しがみられていますが、新型コロナ感染症の患者さんも減ったとはいえ、引き続き外来に見えられています。新型コロナ感染自体は数日で改善されることが多いのですが、むしろ、その後の「後遺症」で長期間苦しまれる方が大勢いらっしゃいます。
今回は意外につらい「コロナ後遺症」について、少し解説してゆきたいと思います。
コロナの後遺症としてよく聞くのは味覚障害や、長引く咳、倦怠感などですが、実際には、「えっ、そんな症状まで?」というような、様々な後遺症があります。ただ、当然ですがコロナの感染が分からなければ、後遺症とも言えないので、まずはコロナの検査を受けて、「診断された後の症状」がコロナ後遺症の前提になります。
具体的な症状は、ざっと上げるだけでも、
- 倦怠感
- 疲労感、脱力感
- 集中力低下
- ブレインフォグ(頭の中に霧がかかったような症状)
- 頭痛·関節痛
- 咳
- 息切れ
- 脱毛
- 記憶障害
- 嗅覚障害
- 味覚障害
- 睡眠障害
- 気分の落ち込み、うつ傾向
などがあります。
後遺症を残す原因についてはいくつかの説がありますが、はっきり機序はわかっていません。また、しっかりとしたエビデンスのある効果的な治療法も、研究はされていますが(この記事を書いている時点では)見つかっていません。
その症状の程度も様々で、日常生活には差し支えない、さして気にならない程度の症状から、まさかと思われるかもしれませんが、たった5分の作業さえできないほどの強い倦怠感、脱力感まであり、最悪、休職、退職を余儀なくされる方もいらっしゃいます。また、コロナ感染の後だけでなく、予防接種の後に症状が出たという報告や、逆に予防接種で後遺症が軽減したという方もいらっしゃるようです。このような非常に強い後遺症の症状は、世間的にもあまり知られていない部分もあります。まれなケースではありますが、重症の後遺症の場合は症状のつらさに加え、「そんな大げさな!?」とそれを周囲に理解してもらえない苦しみは相当な苦痛で、中には自ら命を絶つほどの方も報告されています。
その症状として重症なものは、強い倦怠感や脱力、いろいろな痛みの症状が出る筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome, ME/CFS)と呼ばれるものや、少しのストレスの後、数時間~2日間のうちに尋常でない倦怠感に襲われる労作後倦怠感(PEM: Post-exertional malaise)、クラッシュと呼ばれるものもあります。
これらの症状に対して有効性が確立された治療はなく、一般的に行われている治療は、各個人の症状に対する対症療法となり、痛み止めや抗うつ薬、ステロイドなどを使用している医療機関もあるようです。
必要なのは、採血などの科学的な検査で、考えられる他の原因(甲状腺疾患や、電解質異常、心機能、etc.)をできるだけ除外しなくてはなりません。そのうえで、やはりコロナによる後遺症が疑われる場合は、医療機関によりリハビリや上咽頭擦過療法、抗ヒスタミン薬、薬膳(スパイス)なども用いられることがあります。
東洋医学的に見た場合ですが、患者さんにより様々ではありますが、これらの後遺症の根底にある原因の一つとして、血の巡りの悪さ(血虚、瘀血)は一つの要因として関係しているようです。一説にはコロナ関連のスパイク蛋白が体内で生成される事により、血栓や血管炎などの影響が出るといわれています。現段階では詳しい病態まではわかっていないのですが、後遺症の治療に当たる際は、短期間でも血の巡りを改善するような漢方薬を使用することが多くなっています。
当院のブログの他の記事にもあるように、漢方を服用する際は、その患者さんの体力、体質が大切です。お辛い症状とともに本来の体質を見極めて、それに合わせた漢方薬を選択しなくてはなりません。コロナの後遺症についても、今のつらい症状だけを目標に治療を行っても、なかなか芳しい効果は得られないようです。
また、少し動いただけで、その後に強い倦怠感などが出る場合に、原因として筋力低下などを考え、いわゆる運動リハビリ療法などをすることがあります。しかし、これも無理をすると「逆効果」となることもあるようで、リハビリの際に脱力感などの症状があれば絶対に無理はせず、焦らないで継続することが大切と言われています。
このようなコロナの後遺症については、わからないことも多い病態で、必ず良くなりますという事はできませんが、できるだけ改善を目指してゆきたいと思います。
気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。