- 11月 21, 2024
冬の養生と漢方
夏の猛暑、酷暑が終わり、ほっとしたのもつかの間、最近は秋から冬への変化が、以前よりかなり早く感じられます。10月の平均気温も年々上がっているようで、11月から急激に冬の気候となり、体調不良、感冒症状の患者さんも多くなっています。
暦的には12月から2月までを「冬」としていますが、今回は、この時期に気を付けるべき「冬の養生」について書いてゆきたいと思います。
まずは秋の養生に続いて、当然ながら体を冷やさないようにすることです。また、冬は春に向けて体内にエネルギーを蓄える時期で、あまり消耗しないようにすることが大切と言われています。東洋医学的に言えば、気血と言われる気力、体力のエネルギーを「貯める」時期とされています。体内の倉庫にしっかりと貯蓄を作り、むやみに出さないよう鍵をかけておくようなイメージです。
具体的には、激しく過度な運動は控えるとともに、適度な軽い運動は大切です。ただ、その後に「汗をかいた後の急激な冷え」に注意してください。日常生活でも、現代社会は暖房が入っている場所と屋外での寒暖差が激しく、暖房の入っている場所で暑くて汗をかいて、外に出て急激に冷えてしまう事があります。外出する際は、暖房の入っている場所と、屋外に出た時に寒暖差を予想し、こまめに調節できるように脱ぎ着をしやすい服装を選択することも大切です。
食養生として、日々の食事は体を温める根菜類をとると良いとされています。例えばごぼう、人参、かぼちゃ・玉ねぎ、また動物性のものとして鮭・えび・肉類、その他発酵食品などは良いといわれています。逆に水分やカリウムが多く含まれている食物(スイカ、キウイ、バナナ、パイナップル、レモン、メロン、レタス、キャベツ、白菜、ほうれんそう、小松菜、きゅうり、トマトなど)は体を冷やし易いといわれており、積極的にはとらないほうが良いと思われます。また食べる際は、可能であれば熱を通したり、暖かい料理としての摂取が勧められています。
また、屋外は寒いため、どうしても家にこもりがちになります。気を付けたいのは、デジタルコンテンツ全般です。ゲームはもちろん、ドラマの一気見やスマホ、SNS依存などで睡眠時間が短くなるのも懸念されます。これらのデジタルコンテンツは、総じて過度のドーパミンが出てしまい、脳内のバランス、リズムが崩れることで、昼夜逆転など睡眠の質が落ちたり、自律神経(交感神経、副交感神経)の乱れにも関係してきます。
最初にも書いた通り、冬は気力、体力をためておく時期で、睡眠時間はやや長めにとることが推奨されています。ぬるめのお風呂などにゆっくり入浴してリラックスし、良質の睡眠をとることがエネルギーの蓄積につながります。冬の間はしっかりと休養を取り、春からの活動、スタートダッシュにつなげたいところです
このような冬の養生は、「閉臓」と言われることもあり、五臓六腑を休眠させてエネルギーを蓄え、それを外に出さずに春を迎えるまで熟成させる、ある意味では臓器を冬眠させるようなイメージです。
最後に、冬に用いられる漢方について少し解説いたします。
温める漢方として手足の冷えに「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」や「温経湯」、全身の寒気、冷えに「麻黄附子細辛湯」、内臓から温める桂枝湯類(「小建中湯」「桂枝加芍薬湯」など)や「大建中湯」があります。40~50歳以上の方で食欲のある方でしたら「八味地黄丸」は下肢の冷えや膀胱症状にも効果的です。腰痛などがあれば「五積散」、「桂枝加朮附湯」などが効果を期待できます。女性のむくみと冷えには「当帰芍薬散」、上半身ののぼせと下肢の冷え(情熱下寒)にイライラ症状には「加味逍遙散」、月経随伴症状と赤ら顔や便秘もあれば「桂枝茯苓丸」も有名です。
また鍼灸でいうところの「三陰交」や「血海」、「八風」、「湧泉」というツボも冷えの改善には役立ちます。ゆっくりと温めたり、痛くない程度にマッサージをすると効果的です。
春に向けて、体調を整え、年末年始をお過ごしください。何か気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。