• 11月 12, 2024
  • 11月 16, 2024

狭心症について

西洋医学の視点から狭心症という疾患の解説になります。狭心症は心臓疾患の一つであり、名前はポピュラーですが、その詳しい病態はあまり知られていません。今回はこの狭心症について、簡単ですが西洋医学的に解説してみたいと思います。

心臓は年中無休で、休むことなく体中に血液を送り出して、酸素、栄養を供給しています。ただ、心臓自身も血液を送り出すポンプとして筋肉で収縮しており、当然ながら酸素と栄養が必要です。心臓は心筋と言って筋肉が袋状になり機能していますが、その中には、当然たくさんの血液が入っています。しかし、心臓の中の血液から直接栄養をもらうことはできません。

心臓の筋肉は、大動脈という太い血管の根元から二本の細い血管の「冠動脈」が左右に出ており、これが心臓の表面を走り、心臓表面(外側)から内側の筋肉に向かって、酸素と栄養を供給しています。下の図の右冠動脈(RCA)と左冠動脈(LCA)という血管です。左冠動脈はさらに二本に分かれ左回旋枝(LCX)、左前下行枝(LAD)となり心臓の左心室側に向かいます。

この血管が何らかの原因で細くなってしまったり、血液の流れが滞ると、心臓の筋肉が酸素不足で悲鳴を上げている状態となり、これが「狭心症」となります。この血管が完全に詰まってしまい、筋肉細胞の壊死が始まってしまうと「心筋梗塞」となり、一部の筋肉は永久的に動かなくなり、後遺症を残してしまう状態になります。

この血管が細くなる原因は、血管の壁に動脈硬化によるコレステロールの堆積物ができて、血流が阻害されてしまう事です。高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などが原因となります。この動脈硬化を防ぐために生活習慣を改善し、必要であれば狭心症になる前から内服治療を行うことが大切です。

筋肉の壊死を伴う「心筋梗塞」になると、命に係わる状態となるため、できればその前兆である狭心症の段階で異常を察知し、検査、治療に進む必要があります。典型的な症状は 労作時(運動時)の胸部痛、圧迫感 ですが、人により肩こりなどで出現することがあります。

この運動時の症状は、運動で心臓に負担がかかる(脈拍と血圧の上昇がおこる)と酸素と栄養がより多く必要になり、供給不足による症状が出やすくなります。また、早朝 (朝4時など)に血管が攣縮する(血管の筋肉が収縮して細くなる)ことがあり、同様の症状が出ることがあります(冠攣縮狭心症)。このような症状が出る時には、ニトロと呼ばれる舌下錠などを服用して、動脈を拡張させることで「一時的」に改善することがあります。

狭心症の段階で血管の狭窄が発見できれば、カテーテル治療などでほぼ完治できることが多いのですが、血流が悪くなるほどの血管の狭窄を認めると、多くの方がステントと呼ばれる治療が必要になります。その手術の後は血液サラサラの治療(抗血小板療法)や、コレステロールの内服治療などを続ける必要があり、出血の副作用などのリスクも出てきます。ちなみに、ステント治療とは血管内にカテーテルを入れてゆき、図のような数㎜の網のトンネルを心臓周囲の血管(冠動脈)内に留置する治療になります。

動脈硬化は老化現象でもあり、完全に防ぐことはできません。しかし、動脈硬化につながる糖尿病や脂質異常症、高血圧などを予防し、動脈硬化を起こす前の状態で踏みとどまることが肝要です。薬や手術を受ける必要がない状態を維持できれば、前述のようなリスクのある内服薬を服用せずに済みます。糖尿病、脂質異常症などは生活習慣病と言われるくらい普段の食生活が関係していますので、日ごろから健康診断をお受けになり、日常生活で予防できるよう是非お心がけください。

何か気になる症状などございましたら、お気軽にご相談ください。

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