• 10月 12, 2024
  • 10月 22, 2024

睡眠の漢方

意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、漢方にも睡眠薬の効果を持つものが複数あります。

もちろん西洋薬のような強い効果はありませんが、やさしいながら効果を実感いただけるケースも多く、副作用も強くなく、服用後に依存してしまうことも少なくなっています。

特に初めて睡眠薬を服用いただく方には、まず漢方の睡眠薬をお勧めしています。


一般的な睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾ系、オレキシンやメラトニンに関与するものなど、いくつかのカテゴリーに分かれています。それぞれの特徴や解説は今回は省くとして、簡単に言うと強いものから弱いもの、短時間作用~長時間作用まで多種多様です。問題点は、継続して長期服用した場合の影響(依存性、耐性、認知機能の低下)や、夜間のめまい、転倒、朝の覚醒障害などがあります。強い薬になるほどこの傾向も強くなります。

睡眠に対して使用する漢方薬には、こういった副作用はほとんど見られないのですが、また別の問題点があります。一つは、重度の睡眠障害(現在多くの睡眠薬を服用中)の患者さんには正直に申し上げて、その効果は薄いようです。また、眠れない原因をよく探り、症状をお聞きして、体質に合わせて薬を選択しないとなかなか効果を発揮しません。

東洋医学的な体質の表現に、実証と虚証という考え方があります。一概には言えないのですが、簡単に言うと元気な人が実証で、体力が低下して消化機能などが落ちている方が虚証です。また、睡眠は疲労回復するものですが、実は睡眠自体にも、それなりに体力を使います。寝汗をかく方などは、本当に体力的に弱っていることがあり、眠る漢方というよりも、まずは「眠る体力をつける」漢方治療を行うこともあります。

このほかにも精神的な不安や焦りが強い方、こだわりが強く考えが堂々巡りになってしまう方、いろいろなことが気になりイライラしてしまう方、悪夢で起きてしまう方など、お話を聞きながらタイプ別に内服を変えてゆきます。

以下にいくつかの漢方をご紹介いたします。

酸棗仁湯(体力が低下して、消化機能の低下のある方)

加味帰脾湯(顔色が悪く、食欲低下、不安の強い方)

温経湯(手足のほてりと冷え、口唇の乾燥、腹痛などがある方)

柴胡桂枝乾姜湯(ストレスが多く冷え性、よく頭に汗をかく方)

半夏厚朴湯(のどの違和感、真面目でこだわりの強い方)

抑肝散(「怒り」とストレスの強い方、歯ぎしり、興奮しやすい傾向の方)

柴胡加竜骨牡蠣湯(比較的体力があり、ストレス、夢をよく見る、焦りの強い方、)

大柴胡湯(体力があり、めまい、のぼせ、耳鳴り、ストレス、高血圧、便秘のある方)

黄連解毒湯(のぼせ、みぞおちのつかえ、何らかの精神症状の見られる方)

睡眠に使われる漢方の一部ですが、それぞれの薬に隠れた個性もありますので、外来でお話を伺い、いくつかの候補を挙げさせて頂き、ひとつづつ試していただくこともあります。

また、漢方とは別で生活習慣の話にはなりますが、寝る前のスマホ、デジタル機器の使用や、強い光、刺激は良質な睡眠の大敵です。寝る前の「落ち着いた雰囲気作り」は意外に大切なので、睡眠環境にもぜひお気を付けください。

また日中に30分以上の仮眠をとると夜の睡眠に強く影響します。仮眠をとる場合は5分から10分ほどにするとよいようです。

気になる症状や漢方薬がありましたら、お気軽にご相談ください。

ほんだ内科醫院 船橋三山 047-475-8033 ホームページ