• 10月 8, 2024
  • 10月 17, 2024

冷えの漢方 その1 ~ 未病としての冷え~

冷えは漢方によって治療可能な、しかも得意分野の一つです。しかし、効果発揮に時間がかかる場合があります。そして「冷え」は非常に奥が深い病態です。

まずはそのさわり、「その1」としてまとめてみます。

よく「冷え性」という言い方をします。女性に多いといわれていますが、実は男性でも見かけます。また、実際に手足などの冷えはあるのに、本人が冷えを感じていない場合や、逆に手足は暖かいのに本人が冷えていると感じてしまう場合もあります。

実際には手足は暖かいのに「感覚的に」冷えている感じるときは、自律神経や緊張などが関係している場合が多いようです。この状態で体を温めてしまうと、かえって「のぼせ」などの症状がひどくなることがあります。その際は四逆散と言われる漢方や、ストレス、疲れなどに対して効果的な方剤でアプローチしてゆきます。

また、気を付けなくてはいけない冷えとして、実際に「動脈」と言われる心臓から血液を運ぶ血管が、狭窄していたり、閉塞している場合があります。血流が妨げられ、閉塞性動脈硬化症などと呼ばれる病状です。

この状態は、まずは西洋医学の出番です。足背動脈と言われる血管を触知したり、循環器科(心臓血管内科)で、血液の流れを調べる検査(ABI、PWVと言わるれる検査)をすると評価が可能です。西洋医学では血管を広げたり血液をサラサラにする内服薬の治療や、カテーテルによる血管拡張の手術、ステントの留置などが行われることもあります。当院でのカテーテル手術はできませんが、内服治療として西洋薬と漢方を併用する場合もあります。

そして、動脈などの大きな血管の流れは良好なのに(十分な血液は流れているはずなのに)、なぜか手足が冷える、体の芯が冷える病状があります。原因は不明で「体質」と片付けられてしまうことも多いのですが、微小循環の障害、筋力の不足、代謝の低下、緊張状態の影響などの説があります。

これが、いわゆる「冷え性」と言われる病態です。

治療としては、もちろん物理的に温めるのも効果的ではあります。ただ、使い捨てカイロや局所的な暖房器具(湯たんぽ、アンカなど)を使用する場合は、注意しないと低温やけどなどのリスクもあります。運動、筋力増強などが効果的な場合もありますが、効果が出るまでにどうしても時間と労力がかかります。

レッグウォーマーなどを使用するのもよいと思いますが、生活の中で、外側から温める努力をしてもなかなか改善しない時は、漢方の服用をお勧めします。冷え性は、将来いろいろな不調が出現するかもしれない、いわゆる「未病」の状態です。昔の人は、冷えは万病のもととして、特に注意して過ごしていました。かの健康オタクとして有名な徳川家康も、真夏にも好んで温かいうどんを食べていました。

実際の冷えの治療の際は、冷えのタイプ(手足、足のみ、全身、上半身はのぼせて足が冷えるなど)や「冷え」以外の症状をよくお聞きして、方剤を選択します。例えば、冷えて頭痛、冷えてむくみ、冷えて腹痛、冷えてアレルギー、冷えて肌荒れなど、様々な病態と関連していことが多いのです。下記は冷えに対してよく使用される漢方薬ですが、病状や体力によって使い分ける必要があるので、ご興味がある方はお気軽にご相談ください。

代表的な冷えの漢方

・麻黄附子細辛湯(体全体的な冷え、鼻炎などある方に)

・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(足の冷える方、しもやけ)

・温経湯(肌荒れ)

・桂枝茯苓丸(体力があり、便秘、筋肉質の方)

・加味逍遙散(イライラのある場合、のぼせ、肩こり、便秘)

・当帰芍薬散(むくみのある方)

・柴胡桂枝乾姜湯 など(やや体力がなく、ストレスのある方)

・人参湯(体力がなく、下痢をしやすい方)

その他にもありますが、ご興味がある方はお気軽にご相談ください。

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