• 10月 1, 2024
  • 10月 7, 2024

風邪の漢方  プロローグ ~漢方と抗生物質~

風邪の治療に関して、漢方は非常に多くの方剤(薬)があります。ある程度であっても、それを解説してゆくには膨大な時間がかかります。それでも、多少なりともお役には立つと思いますので、さわりの部分から、ほんの少しずつでも書いてゆきたいと思います。

まず、具体的な話になる前に、総論的、漢方の位置づけ的なお話になります。

風邪、感染症は、ある意味、漢方の得意分野でもあります。なぜなら、抗生物質が発見される以前は、人類の死因の多くは感染症によるものが多く、何とかその病魔から逃れようと、多くの研究を重ねたためです。

かつてコレラや赤痢、結核と言った感染症は不治の病であり、現代ではわずか1週間で改善する「ただの肺炎」でさえ、もっと短い時間で致命的となることもありました。それは最初の抗生物質ペニシリンが発明される前、僅か100年前の事です。漢方は、それまでの多くの疾患の治療のために千年以上の時間をかけ、多くの経験から知見を得て、それを受け継いで現代にいたります。つまり、ただの風邪であっても、こじらせれば命にかかわるため、感染症の症状を「徹底的に研究」してきたわけです。

この数十年の進歩で、現代社会では抗生物質や抗ウイルス薬を使用することで、100%ではありませんが多くの感染症を改善させることが可能になっています。そのさらなる進化もあり、すでに感染症は「治せる病気」の一つになりましたが、しかしその効能ゆえに必要以上の投与がなされ、汎用されることにより、多くの耐性菌を生み出して、一部は再び「治せない感染症」となっていることもまた事実です。

では、なぜ抗生物質で風邪や肺炎が治るのに、漢方薬を服用する必要があるのでしょうか?

それは誤解を恐れずに言えば、風邪の際の「体の余分な反応」を、漢方薬が効果的に抑えて、免疫の働きやすい環境を作ってくれるためです。

西洋医学の治療では細菌感染であれば多くの菌に効果のある抗生物質があります。しかし、現代医学をもってしても、未だウイルス感染症には特効薬がないものも多く、感染しているウイルスの種類がわからないと、治療もままなりません。

この場合は患者さん自身の免疫力で回復するしかなく、西洋薬では症状を抑えるだけの治療になってしまうことがあります。このような時は漢方薬を併用することでより早い症状の改善、回復が期待できる場合もあります。このあたりの詳しいお話は、今後、少しずつ投稿してゆけたらと思っております。

実際、自分も含めて、漢方医が風邪をひいたとき、多くの先生は西洋薬よりも漢方薬をまず服用します。ただ、必要であれば抗生剤、抗ウイルス薬を併用もします。しかし西洋薬の解熱鎮痛剤、鎮咳薬などの症状を抑える薬だけを服用することは少ないように思います。

漢方ではその人の、その時の病状に合った薬を選択し、治療にあたります。風邪の引き始めか、慢性期か、風邪の性質や本人の体質、年齢、また例えば同じインフルエンザであっても症状の出方によって処方を変えます。それをしっかり判別できれば、一般的な風邪薬よりも効果が期待できます。当院での感冒、風邪症候群の治療の現場でも、服用できる方であれば、半数以上の方には漢方を併用することが多くなっています。ただ服用できない患者さんもいるので、その際は無理強いせず、一般的な薬での治療になります。

ただ、風邪を最終的に治療するのは漢方でも抗生物質でもなく、ご自身の免疫力、いうなれば体力です。しっかりと静養して、消化に良いものと、ビタミンなどを含む良質の栄養を取ることをお勧めします。

漢方がその一助になることを願います。少しでも楽に風邪を乗り切りたいときには、「苦い」薬になるかもしれませんが、服用をご検討ください。

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