• 9月 17, 2024
  • 10月 22, 2024

西洋医学と東洋医学

西洋医学と東洋医学がよく比較されますが、決して対立するものではなく、併用や使いどころを見極めて、いいとこ取りをするのが良いと思います。漢方は様々な理由からエビデンス(科学的データ)はまだ乏しい状況です。しかし、最先端の研究によりほんの一端ではありますが、分子生物学的にその構造、効果が徐々に解明されてきております。なにより漢方を専門にする先生ほど、ご自身で漢方薬を服用している傾向があります。それでは漢方の歴史から、西洋医学と東洋医学を紐解いてゆきたいと思います。

漢方の歴史

漢方は古代中国で生まれ、日本に伝来し、独自の進化を遂げました。

古代中国における漢方の始まりについてはこちら → 漢方の成り立ち

その後、江戸末期までは、日本での医療は東洋医学が医学であり、病気の治療のほぼすべてを担っておりました。

江戸末期から昭和にかけての過渡期

現代社会では、一般的に医療、医学と言うと、当然ながら科学に基づく西洋医学を指します。しかし、江戸時代に欧米から西洋医学が伝えられた時は、西洋医学は蘭学と呼ばれていました。当時、本道と呼ばれた漢方は、その後、過渡期を経て立場は逆転し、漢方医学は衰退して西洋医学が医療の主流となりました。西洋医学は科学技術の進歩とともに、目まぐるしい進化を遂げ、明治以降、人々の疾病の治療は、西洋医学を基本とすることになります。

その一方で、漢方、鍼灸などの東洋医学は、明治維新による西洋文化の流入の陰で時代に取り残され、一度は消えてしまうかに思われました。しかし、知恵と知識の貴重な体系、その灯を消すまいと奔走した有志の手により、現在まで細々と引き継がれました。現代社会ではその効果が見直され、最新科学により分子生物学的に次々に効能が証明されております。西洋医学では手の届かない、その不思議ともいえる効能と、副作用などが比較的少ないこともあって、改めてその価値が再確認されています。

東洋医学の位置づけ

西洋医学と東洋医学の使いどころを、ざっくりと現代医療の中で考えると、基本的に急性期 (病状が激しく、秒や分単位で悪化してゆく状況) は西洋医学にお任せする方が良いと思われます。逆に慢性期で病状が安定しており変化も緩やかな場合、特に西洋医学では症状が改善しきれない場合、また原因がはっきりしない時はやはり漢方の出番かと思います。(急性期の漢方も無い訳ではなく、芍薬甘草湯などといった即効性で、劇的な効果がみられる漢方もいくつかあります。)

西洋医学では効果が期待できない体の不調にも、漢方であれば対応できることが多々あります。

ブログ記事 → 漢方の効果が期待できる症状について 

よく患者さんに申し上げるのは、患者さん自身につらい症状があるのに、西洋医学の検査や診察では問題がなく、「しばらく経過観察をしましょう」といわれた時には、「漢方で」経過観察をしましょうとお話しています。

漢方は科学的な検査、臨床試験などができない時代に、その大部分が「患者さんの苦しみとその言葉」で組み上げられた医療体系です。現代医学ほどの確固たる効果の保証はできませんが、その現代医学、科学をもってしても、「漢方がなぜ効くのか」という謎の多くを解明できていません。むしろ西洋医学では改善できない数々の症状を改善するポテンシャルを持っています。

また科学的エビデンスで裏付けられた西洋医学でさえ、その強い力ゆえに、時に副作用で患者さんにより大きな苦痛を与えることもあります。もちろん漢方にも間質性肺炎など、強い副作用が出ることもあり、安全と言い切れない部分もあります。

少なくとも、西洋医学であろうと、東洋医学であろうと、患者さんの苦しみとその言葉をしっかりと受け止めてゆくことが、「医療」 を前に進め、その未来を創る何よりも強い力になるはずです。患者さんの言葉で築き上げられた漢方は、今後も人と苦しみに寄り添う治療体系であると思います。

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